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札響の弦にしてやられる

 6月8日の札響名曲シリーズを聞く。前回がほんの少し前の5月25日だったけど、風邪で寝込んでいて無念の欠席。実はこの日になっても耳が不調で残念だった。

 で、今回の最初はブリテンの「シンプル・シンフォニー」。楽団員の登場は弦だけであっさり終わる。その名のとおり、聞いていると簡単に曲の組立がわかる。印象的だったのは3楽章のサラバンド。他の楽章に比べて長めの曲で、音楽は全然南国風ではないが、でも聞いているとその出自が背景で微かに鳴り響いているような気がした。弦の美しさがもう1曲目から全開で、指揮の尾高さんもこの曲が好きなんだろうなと思わせる見事な演奏。もうこの曲だけで今日は終わっても良いくらいだった。

 

 2曲目が横坂源さんをソリストに迎えたハイドンの第1チェロ協奏曲。この曲は確か昔習っていた頃練習したことがあったはず。だが、全然歯が立たず先生もすぐに他の曲に替えてしまったと記憶している。ちょっとお恥ずかしい思い出の曲。横坂さんは臆することなくもう自信満々に弾いていた。羨ましい。チェロは札響の人とかと思うくらい同質の音で、つまり純できれいな音。バックのオケも弦がここでも滑らかかつ柔らかい音でソロを支える。3楽章も大詰めでソロも弦もウルトラスムースな音色で快調にとばしているところなんかガソリンエンジンではなく電気モーターで疾走する車を連想させた。ハイドンがこれで良いのかと思いつつも、絹のような手触りの音色に少し酔いながら聴き入ってしまった。アンコールは「鳥の歌」だったが、オケのチェロが伴奏するというヴァージョン。これ何だろうと思ったら、帰りの掲示に「チェロアンサンブル編曲文屋治実」とあった。チェロの文屋さんが手を入れ、チェロ同士でサポートするという粋な計らいだったのだ。

 

 休憩後の後半はヴェルディの序曲集。「ナブッコ」「シチリア島の夕べの祈り」「椿姫」「ルイザ・ミラー」と「運命の力」。熱心なヴェルディの聞き手ということはなく、録音で聞いたことがあるのも「椿姫」「リゴレット」「アイーダ」「オテロ」ぐらい。それも学生時代だけだと思った。「椿姫」を除けば後は全然知らなくて、「運命の力」を昨年のコンサートで聞いただけ。それでも聞いていて楽しめた。1曲終わるごとにさあこれからどんな舞台になるんだと少しワクワクしたものだが、これこそが序曲の役割だということがよくわかった。この5曲の中で印象的だったのは「椿姫」第1幕への前奏曲かな。ここでも弦がきれいで、ちょっと浮ついた軽薄な曲と並行して流れるヴィオレッタの悲しみが切々と伝わってきたものだ。アンコールあり。もう定番の「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲。クラオタの端くれとして心は動かされまいぞと固く決めたが、ここでも弦の音にあえなく降参。この日は札響の弦にとことんやり込められた一日でありました。

 

 写真はKitaraに向かう途中の中島公園の藤棚。初夏の陽気の中、花が咲き始めた。下を歩いているとかぐわしい匂いが。

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