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グールドの謎〜「フーガの技法」に関して

 グールドが好きな人なら誰でも知っているが、彼は本当に対位法、それもフーガに執着した。対位法的に書かれていない曲、バスラインがしっかりしていない曲をいっさい認めなかった。だから、モーツァルトもショパンも攻撃の対象だった。もちろん、当然のことにバッハは崇拝の対象だった。彼のレパートリーは意外に広いが、それでもバッハはその中心にあったし、録音された曲の大半はバッハだった。彼はバッハの鍵盤楽器で書かれた曲をすべて録音するつもりだったといわれる。そのバッハの晩年の傑作に「ゴールドベルク変奏曲」と「フーガの技法」がある。「ゴールドベルク変奏曲」はもちろんグールドのデビュー作だ。1956年、この衝撃的な録音でグールドは一躍天才ピアニストとして世界中に名を馳せることになった。そして「フーガの技法」もグールドは1962年に録音している。オルガンで。ただ、その録音はコントラプンクトゥス第9番までしかないし、続きをとうとう録音しなかった。

 「なぜ、グールドはフーガの技法を完結させなかったのか?」あれほど対位法に執着し、バッハの曲を全曲録音するつもりでいた彼がバッハの対位法による作曲技法の集大成といわれるこの曲を完結せずに終わっているのだ。不思議ではないだろうか。しかも、この曲に限ってピアノではなくオルガンを用いている。この曲の録音にレオンハルトによるものがあるが、この録音は古学の先駆者としてチェンバロを用いたもので、CDのブックレットには1969年の彼の論文が収められている。これが実に興味深いのだ。大雑把にいって彼はこの曲が初版譜の12曲で完成されたものであること、そして2台のハープシコードによるものであると主張する。バッハの死により未完に終わったというのは間違いだという。レオンハルトの主張を知らなくても、グールドはピアノを使って、それも多重録音というテクニックを使って録音できたはず。ワーグナーの編曲版でそれを実行している彼ならこの考えに飛びついた思うのだが、それをしなかった。

 グールドは膨大な文章を残していて出版もされている。その他たくさんのインタビューもあるし、多くの研究家がグールドに関していろいろな研究成果を発表しているし、発見もある。私はそのいずれもほとんど触れていない。したがって、私のこの疑問に関してはとっくに回答済みということも多分にあると思う。もしそうであればご教示いただければ幸い。よろしくお願いしたい。

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