ジョージ・セルへのオマージュ

 最初のブログはセルの思い出から。

 セルの演奏を最初に聞いたアルバムが写真のもの(CDですが)。1970年、大阪万博のイベントの一環でセル指揮するクリーブランド管弦楽団が招聘され、大阪を皮切りに全国でツアーを行いました。これがNHKで放映され、たまたまその頃クラシックを聞き始めていた私が見ていました。演奏が始まる前にセルのインタビューがあり、大木正興氏(違っていたら失礼!)と後のバイリンガルの先駆ともいうべき鳥飼久美子さんが通訳で臨んでいました。「日本の聴衆は真剣に聴いてくれる」というセルの発言を未だに憶えています。正直に言って、このとき放映された演奏には格別な感想はありませんでした。しかし、それから少し経ってからレコード店(!?)を覗いていたら、来日記念盤としてモーツァルトの39番と40番を入れた盤があり、テレビで見ていたという親近感とジャケットの写真に魅かれて購入にいたりました。ト短調に関してはすでに別のLPを持っていたにもかかわらずです。今でいう、ジャケ買いというやつですね。このジャケ買い、後に別の運命的な出会いを誘います。

 帰ってからさっそくかけてみました。そして、この演奏に衝撃を受けました。最初のヴィオラのきざみに乗って歌われる有名な主題があまりにみごとに息づいていて、この曲の真価を初めて知らされました。セルの演奏については未だに冷たいとか機械的といった評価が多いように思います。しかし、このフレーズを始め、よく聞くとすべてに渡って実によく歌っていることに気づくと思います。セルがアンサンブルの厳密さを重要視したのは「ちゃんと歌う」ことを実現したからではなかったかと思います。第1ヴァイオリンだけでも10人以上という場合がありますが、10人が10人、それぞれの思いで歌ったのでは、全体として一つの歌になりません。緊密なアンサンブル、それも縦だけではなく横も、を目指して初めて一つの歌 ーセルの歌ー になると考えたのでしょう。

 以来、セルとのつきあいが始まり、今に続いています。これから、折りにふれて書いていきたいと思っています。お付き合いください。

 ちなみに、この有名なト短調のテーマ、小林秀雄が「モーツアルトのかなしさは疾走する。涙はおいつけない。」と評したのは有名ですが、とある神父さんが、「モーツァルトのアレグロは疾走する。悲しみは追いつけない。」といっていたとか。おやおや。